IDOL STORY.0-5
姫城くるみ
―むかしむかし、あるところに
―くるみ姫という可愛い可愛いお姫様がいました
―でも、くるみ姫はお城で暮らせません
―綺麗なドレスも、豪華な馬車も
―お姫様は持っていませんでした
―なぜなら、お姫様は
―まだ、深い深い魔法の眠りについているからです
プロローグ0.5『まだ見ぬ物語』
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男性は少しだけ緊張していた。
というのも、今いるこの場所は今までとは様子が違う。
活気に溢れているが、その活気付いた空気が若く感じる。そもそも、生徒の年齢が若い。
つまるところ彼は今、中学校に足を運んでいた。
今までは高校生をメインにスカウトを行っていたが、今日は少し下の年齢の生徒からアイドルの卵を見つける。
既に何回か生徒に引き留められ、「スカウトしてください!」という申し出をされたものの、どれも物珍しさによる冷やかし半分のものばかりだった。
さて。女子生徒に話を聞くと元気があるおかげで、「アイドル!?なりたいなりたい!」「どんなことするの!?」とこちらが質問攻めされてしまったので、男子生徒に聞いてみよう。
軽く挨拶と自己紹介を済ませ、本題へ入る男性。
「早速なのですが、皆の周りでアイドルに向いてそうな生徒さんはいませんか?」
「ぇえええ!」「お前言えよ!」「やだよ!」
男子生徒達は男子生徒達で、多感な年頃のようだ。
気になっている女の子が誰かという話を始めた。
「A組の佐藤とかは?!」
「えっお前ああいうのが好みなの?」
「ち、ちげーし!別にそういうのじゃ」
「...プリンセスちゃんは?」
ワイワイと話す中で、気になる単語がポソッと聞こえた。
「............プリンセス、ちゃん?」
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