IDOL STORY.0-1
―プロローグ―
野々崎あかり
どんな人にも『夢』はある。それは宇宙飛行士になることだったり、お嫁さんになって幸せに暮らすことだったり。
————ねぇ、貴方の『夢』どんな夢?
私は……私たちの『夢』は—————
▷
夏の終わりの、でもまだジワリと汗の滲む季節。
そんな夏休み明けの体育館には生徒が集まっていた。
校長の話が始まってからしばらく経った頃、体育館の扉がガラガラと音を立てて開いた。
「はぁ、はぁっ…遅れてすみません〜…」
音を立てないように忍足で自分の列へと向かうは扉を開けた犯人である野々崎あかり。
「あっ、あかりおっはよー!新学期初日から遅刻とはさっすがー!」
そんなあかりに小声で、しかしながら元気に声をかけるのは桑野千秋。あかりの友人である。
「うぅ…聞いてよ千秋ちゃぁん…!今日は頑張って起きたんだよ?でも、でも猫が……!」
「うんうん、そうだよな〜!月曜の朝礼、校長の話の最中に来れるなんて新記録だぞ!あかり〜えらいえらい〜」
「え、えへへ〜ありがとう」
「———えー、であるからしてー。今週は夢実ヶ丘学園の方がアイドルのスカウトにいらっしゃいます」
2人の会話の途中に聞こえたスカウトなる単語。
「…なっ?!」
「アイドルの…スカウト……?」
千秋は驚き、あかりはあまり理解できていないようだった。
しかし、この事実が色々な人の運命を変えていくことになろうとは誰も考えていなかった。
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